ポール・コリアー『新・資本主義論』の感想とレビュー

新・資本主義論「見捨てない社会」を取り戻すために /白水社/ポール・コリアー

ポール・コリアー『新・資本主義論』の概要

『新・資本主義論』は、グローバリズムが急進展する世界で、行きすぎた市場原理や個人の利益の追求が生んだ格差拡大と、その結果浮上してきた新たなイデオロギー対立やポピュリズムといった問題に、地域・学歴・倫理観における格差、そして家庭・地域社会・企業・国家といった視点から迫った書籍です。

コリアー氏は、イングランド北部シェフィールド出身であり、労働階級の家庭に生まれた背景や、学術界のエリートになった自分と故郷の人たちとの格差を身をもって体験し、そんな現況をなんとかしたいという願いと、公共政策次第で現況は変えられるという強い思いが『新・資本主義論』では随所に窺えます。

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The Future of Capitalism: Facing the New Anxieties /HARPERCOLLINS/Paul Collier

原書：The Future of Capitalism

『新・資本主義論』は、原書『The Future of Capitalism』を全訳した書籍です。『新・資本主義論』の翻訳者である伊藤真氏もイギリスで過ごした経験があり、イギリスの歴史や文化を熟知した伊藤氏の翻訳は大変素晴らしく、読みやすかったです。

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新・資本主義論「見捨てない社会」を取り戻すために /白水社/ポール・コリアー

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道徳感情論人間がまず隣人の、次に自分自身の行為や特徴を、自然 /講談社/アダム・スミス

アダム・スミスやデイヴィッド・ヒュームの道徳論の関係性

『新・資本主義論』は、社会心理学や倫理学の視点も多く導入されており、アダム・スミスやデイヴィッド・ヒュームの「道徳論」にさかのぼり、相互の信頼と共感に裏打ちされた地域社会における人びとの絆が重要とされています。

関連書籍：アダム・スミス『道徳感情論』

関連書籍：デイヴィッド・ヒューム『道徳について』

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道徳について人間本性論　３ /京都大学学術出版会/デイヴィッド・ヒューム

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最底辺の１０億人最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か？ /日経ＢＰ/ポ-ル・コリア-

ポール・コリアー(Paul Collier)とは？どんな人？

『新・資本主義論』の著者・ポール・コリアー(Paul Collier)は、開発経済学・公共政策の専門家であり、オックスフォード大学公共政策大学院（Economics and Public Policy）の教授です。

コリアー教授はアフリカをはじめとする最貧困に蔓延する諸問題の解決に取り組み、ローカルとグローバルの両視点を組み合わせた立体的な分析や提言をされる方として知られています。

コリアー氏はこれまでに、1)世界銀行の研究開発部門ディレクター、2) ブレア政権下のイギリス政府顧問などを歴任された方でもあります。

日本でも以下のような邦訳書でコリアー氏が紹介されています。

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民主主義がアフリカ経済を殺す最底辺の１０億人の国で起きている真実 /日経ＢＰ/ポ-ル・コリア-

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収奪の星天然資源と貧困削減の経済学 /みすず書房/ポ-ル・コリア-

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エクソダス移民は世界をどう変えつつあるか /みすず書房/ポール・コリアー

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