三島由紀夫とコンプレックス

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三島由紀夫『金閣寺』

写真: 三島由紀夫『金閣寺』

 

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三島由紀夫の祖母コンプレックスと劣等感

こんにちは!三島由紀夫の卓越した言葉のセンスに虜になっているAoneko( @blue_cats03)です。今回は、「三島由紀夫とコンプレックス」についての記事です。

芸術家や作家などの作品は、コンプレックスの影響を受けているものが多くありますが、東京・市ヶ谷の陸上自衛隊で割腹自殺を遂げた小説家・三島由紀夫も様々なコンプレックスを持ち続けた人だと筆者は思っています。

 

 

三島由紀夫は男性としての劣等感をもっていた

三島由紀夫は、ある時期から、体を鍛え、並荒男ぶり、男らしさといったものを発揮しましたが、その背景には、母親に育てられたのではなく、祖母に育てられたということがあります。

その祖母は体が弱かったのであまり一緒になって遊んであげることができず、しかも女の子が欲しかったということで、三島に、男でありながら女の子の着物を着させたりました

このような育て方のために、三島自身、体が虚弱であったということと相まって性的同一性の混乱がみられました。

 

 

さらに、体の虚弱さ、背の低さというのは、彼に男性としての劣等感を大きくもたせました。このような、男性として自分は劣等であるというコンプレックスは、彼の人生を貫いている筋でもあります。

したがって、「楯の会」といったいかにも雄々しい精神のグループをつくったり、ボディービルや剣道などで自分を鍛えるということは、思春期までの三島の女々しさ、男性としての魅力のなさを補おうとする、コンプレックスへの果敢なる挑戦だったといえるでしょう。

 

 

三島由紀夫のコンプレックスと文学

一方で、三島由紀夫の文学はコンプレックスの克服とは別次元にあるように思います。

むしろ女性として育てられ、文学的な習練を受けたことにより、祖母の与えた文学的な傾向を自分の資質に動員して果たしていたかにみえます。つまりその点で彼は、祖母の愛情、祖母の願望のレールの上に従っていたともいえます。祖母コンプレックスをもち、無情の愛、見えざる指令に動かされていたとも考えられます。

 

 

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三島由紀夫の小説の中には、彼がコンプレックスを克服しようとしたことを描いた作品もあります。しかし、三島文学の多くはロマン的であり、女性的なニュアンスがきわめて強いものです。

したがって、実践面では男性性の不足のコンプレックスを克服しようとしていながら、文学ではむしろ祖母から与えられたコンプレックスに気づかず、巻き込まれていたという解釈もできます。

また、文学的な価値からいえば、それによってわたしたちは三島文学の成立をみることができるともいえるでしょう。

 

三島由紀夫の『仮面の告白』

彼の自伝小説といわれた『仮面の告白 』では、彼の生い立ち、恋、そして性に関する事柄など、三島由紀夫を知る上で欠かせない貴重な記述が見られます。

強烈なるコンプレックスを持つ主人公が悟られないようにかぶった「仮面中から「告白」する。センセーショナルな内容を、何とも美しい表現とメタファーで包む三島由紀夫はやはり最高の作家一人といえるでしょう。

 

 

 

今回は、「三島由紀夫とコンプレックス」についての記事でしたが、当サイトでは、文豪夏目漱石のコンプレックスに関しても解説しています。よろしければご覧ください。

【関連書籍】『夏目漱石とコンプレックス』

夏目漱石とコンプレックス
夏目漱石は里子の経験から母子のコンプレックスを抱えていました。夏目金之助の愛情に飢えた作風は作家夏目漱石の個性になりました。 坊ちゃんや道草などは漱石のパーソナリティが埋め込まれているように思います。