三島由紀夫の祖母コンプレックスと劣等感
こんにちは!三島由紀夫の卓越した言葉のセンスに虜になっているAoneko( @blue_cats03)です。今回は、「三島由紀夫とコンプレックス」についての記事です。
芸術家や作家などの作品は、コンプレックスの影響を受けているものが多くありますが、東京・市ヶ谷の陸上自衛隊で割腹自殺を遂げた小説家・三島由紀夫も様々なコンプレックスを持ち続けた人だと筆者は思っています。
小説家の三島由紀夫は「個性とは自分の弱みを知り、それを強みに転じる居直り」ということを言っています。
三島自身、コンプレックスの塊であり、男性性の不足を補おうとする、コンプレックスへの果敢なる挑戦をした人でした。最期はその怪物に呑み込まれてしまいましたが…https://t.co/O66fpHE2rw— Aoneko Lab (@blue_cats03) October 19, 2020
三島由紀夫は男性としての劣等感をもっていた
三島由紀夫は、ある時期から、体を鍛え、並荒男ぶり、男らしさといったものを発揮しましたが、その背景には、母親に育てられたのではなく、祖母に育てられたということがあります。
その祖母は体が弱かったのであまり一緒になって遊んであげることができず、しかも女の子が欲しかったということで、三島に、男でありながら女の子の着物を着させたりました。
このような育て方のために、三島自身、体が虚弱であったということと相まって性的同一性の混乱がみられました。
三島由紀夫は子供時代、座骨神経痛の祖母の部屋で育てられた。宮中にいた祖母が与えた友達は、しつけのいい女の子三人。三島は、女の子と女言葉で遊びながら、窓外に見える男の子たちが相撲する姿に、胸をときめかしていたそうだ、ちなみにヘミングウエイも幼い頃は、女の子として育てられた。
— ひきたよしあき (@serge422) November 13, 2010
さらに、体の虚弱さ、背の低さというのは、彼に男性としての劣等感を大きくもたせました。このような、男性として自分は劣等であるというコンプレックスは、彼の人生を貫いている筋でもあります。
したがって、「楯の会」といったいかにも雄々しい精神のグループをつくったり、ボディービルや剣道などで自分を鍛えるということは、思春期までの三島の女々しさ、男性としての魅力のなさを補おうとする、コンプレックスへの果敢なる挑戦だったといえるでしょう。
《改造人間・三島由紀夫…偏愛、オブジェ…老人は永遠に醜く、青年は永遠に美しい》…劣等感…強迫性漂う強靭な実行…意思の勝利…自己に宿る弱さの徴を超克…強さと若さの美学で翼をつける…反対方向に流れた太宰治が嫌い「似てるからかな」(三島) pic.twitter.com/bIMCvSWzM4
— BON (@1632bdkrst) November 9, 2017
三島由紀夫のコンプレックスと文学
一方で、三島由紀夫の文学はコンプレックスの克服とは別次元にあるように思います。
むしろ女性として育てられ、文学的な習練を受けたことにより、祖母の与えた文学的な傾向を自分の資質に動員して果たしていたかにみえます。つまりその点で彼は、祖母の愛情、祖母の願望のレールの上に従っていたともいえます。祖母コンプレックスをもち、無情の愛、見えざる指令に動かされていたとも考えられます。
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三島由紀夫の小説の中には、彼がコンプレックスを克服しようとしたことを描いた作品もあります。しかし、三島文学の多くはロマン的であり、女性的なニュアンスがきわめて強いものです。
したがって、実践面では男性性の不足のコンプレックスを克服しようとしていながら、文学ではむしろ祖母から与えられたコンプレックスに気づかず、巻き込まれていたという解釈もできます。
また、文学的な価値からいえば、それによってわたしたちは三島文学の成立をみることができるともいえるでしょう。
三島由紀夫の『仮面の告白』
彼の自伝小説といわれた『仮面の告白 』では、彼の生い立ち、恋、そして性に関する事柄など、三島由紀夫を知る上で欠かせない貴重な記述が見られます。
強烈なるコンプレックスを持つ主人公が悟られないようにかぶった「仮面」の中から「告白」する。センセーショナルな内容を、何とも美しい表現とメタファーで包む三島由紀夫はやはり最高の作家の一人といえるでしょう。
三島に幼時から強度の肉体コンプレックスがあり、たくましい筋肉への憧れを抱いていた事実を認めぬのではない。彼自身も「仮面の告白」以下の諸作できわめて卒直に吐露している。だから、だからこそ、みごとに三島由紀夫は「男」だったと私は胸せまるのだ。(三島由紀夫の文武両道)
— 梶原一騎BOT (@kajiwarameigen) June 21, 2020
今回は、「三島由紀夫とコンプレックス」についての記事でしたが、当サイトでは、文豪夏目漱石のコンプレックスに関しても解説しています。よろしければご覧ください。
【関連書籍】『夏目漱石とコンプレックス』